積善山の三千本桜
積善山(せきぜんざん)は、岩城島の中心にある、高さ約370mの山です。富士山のような美しい形をしているので、別名「岩城富士」とも言われています。
登山道ぞいに3,000本以上の桜が植えられ、桜の名所として有名で、「三千本桜」と呼ばれています。桜の見ごろは、4月上じゅん〜中じゅん(その年によって変わります)です。桜のシーズンには、全国各地から大勢の花見客でにぎわいます。
(写真:積善山の桜 提供:上島町)
実は現在、桜の本数は3,000本ではなく、4,000本以上もあります。これは自然に生えたものではなく、岩城島の人が植え、守ってきたものです。
桜を植えたきっかけは、戦争中の1945年(昭和20年)ごろ、軍に松根油(しょうこんゆ/戦争で使う飛行機の燃料。松からつくる油)を納めるために、積善山の山頂付近に植えていた松を切り、そこに桜を植えたのが始まりと言われています。その後、戦争が終わると、田中しゅんかい住職という方が、岩城のみんながいやされるようにとの思いで、山のふもと(現在の桜公園がある場所)にも桜を植えました。はじめは大きな桜が4〜5本しかなかったそうですが、お不動様の堂主(どうしゅ)をしていた前田重作(まえだ・じゅうさく)さんが、現在の桜公園付近の整備や管理を行ってくれ、その後もみんなで大切にするようになりました。
1956年(昭和31年)5月、積善山は、国立公園第二種特別地域に指定されました。1964年(昭和39年)から1973年(昭和48年)までの10年間で道路も整備され、新しい桜も植えられました。また、卒業記念、厄払い(やくばらい)、還暦(かんれき)記念などで、岩城の人たちが植樹をしてきました。今の美しい桜は、こうした取り組みによります。
現在、積善山にある桜の種類は14種類以上もあるそうです。染井吉野(そめいよしの)、山桜(やまざくら)、彼岸桜(ひがんざくら)、しだれ桜、大島桜(おおしまざくら)、川津桜(かわづざくら)、薄紅寒桜(うすべにかんざくら)、陽春(ようしゅん)、神代曙(じんだいあけぼの)、10月桜、椿寒桜(つばきかんざくら)、陽光(ようこう)、関山(かんざん)、ウコン桜などが植えられています。
(写真:夕暮れの積善山 提供:上島町)
毎年春には、「いわぎ桜まつり」が行われます。桜まつりの期間中は、19〜22時まで竹あかりによるライトアップをしています。竹あかりは、毎年中学生が作ってくれています。
また、桜がさく前には、地いきのボランティアの方が清そう活動をしています。積善山は、文字どおり、「善を積む山(良いことを積み上げていく山)」として、島民にとってかけがえのない島の宝となっています。
【取材協力】
上島町役場
【調査・文章】
2018年度岩城小学校6年生