島四国「大谷のお接待」

 弓削島では、毎年4月の第3日曜日に「島四国」という行事が行われています。島四国の日には、島内にある八十八ヶ所の札所(ふだしょ)をお参りします。そのじゅん礼者(お参りする人)をおもてなしする風習が「お接待(おせったい)」です。

 弓削島の北東にある大谷(おおたに)地区では、八番札所の熊谷寺(くまたにじ)でお接待が行われています。多くのじゅん礼者が、この大谷のお接待を楽しみにしており、毎年たくさんの人が訪れます。

(写真:大谷の札所)

 大谷のお接待は、午前7時から始まって、だいたい午後2時ぐらいまで行われます。その間、たくさんの人が来るので、お茶を出したり、食器を片付けたりと、お接待を手伝う人たちはとても大変です。

 大谷のお接待は、80年以上前に始められました。始めたのは、お話をうかがった大谷地区に住む長田良子(おさだ・りょうこ)さん(85歳)のおじいさんとおばあさんです。今は、大谷に住んでいる人たちだけはなく、別の地区など色々なところからも手伝いに来て、約20人ほどでお接待をしています。お接待は、みんなが協力し合って行われています。

 昔は、大きな道がなかったので、じゅん礼者も少なかったようですが、今では弓削島の他、同じ上島町内の岩城島や生名島、広島県の因島や福山市などからもグループで車を使ってくるようになりました。訪れるじゅん礼者の数はどんどん増え、毎年おおよそ500人もの人がやって来るようになったそうです。

 昔、大谷のお接待では、白ごはんや豆ごはん、手作りのたくあんしか出されていなかったそうですが、今では、たけのこの煮物(にもの)や豆ごはん、白ごはんや市はんのたくあんが出されています。現在、大谷の接待で出されている豆ごはんとたけのこの煮物は、とても美味しいとじゅん礼者に評判です。

 豆ごはんの材料は、お米70kg、塩2kg、うまみ調味料の小さいもの200gを一ふくろ、大きいもの600gを2/3ふくろ、あずき300gを20ふくろです。豆ごはんは、あらかじめゆでた小豆、うまみ調味料、塩を混ぜておいたものを、たきたての白いごはんに混ぜ合わせて作ります。ごはんは、5しょうだきと3しょうだきのガスがまで、当日朝の5時からくり返したきます。豆ごはんの豆は、ごはんに混ぜ時にちょうどよい味になるように、かなりしょっぱくしているそうです。また、しょっぱくすることでいたみづらくなります。ごはんに混ぜる前の豆を食べさせてもらうと、海水をまちがえて飲んだ時以上にしょっぱかったです。

(写真:豆ごはん)

 たけのこの煮物の材料は、しょうゆ1.8Lのペットボトル2本、みりんは1.8Lと0.9Lのペットボトル1本ずつ、そしてさとう2kg、鯛(たい)をなべ1つに対して大きいもので1ぴき程度、いろどりに、にんじんと油あげ、はんぺんとこんにゃくを適量です。

 たけのこは、大谷の桜園や下弓削地区などで、お接待の3日ほど前にキャリー(採集コンテナ)約8箱分採り、ゆでて水につけてあくぬきをしておきます。その水は毎日変えるそうです。

 朝出す分のたけのこの煮物は、お接待の前日から煮始めます。まず、すべての調味料と水をボウル2はい分、たけのこ、にんじんやはんぺん、油揚げ、こんにゃくを入れます。ふっとうしたら、鯛(たい)をたけのこの上にのせます。鯛から美味しいだしが出るからです。鯛は15分ぐらいしたら取り出します。中にほねが落ちないようにするためです。たけのこがうすいしょうゆ色になったら、出来上がりです。このたけのこの煮物は、とちゅうで無くならないよう、お接待の最中にもくり返し作ります。直径19cm、高さ15cmほどの大きななべでおよそ16ぱい分くらい作るそうです。

(写真:たけのこの煮物を作るなべ)

 私は、80年以上前から大谷のお接待があると知ってびっくりしました。また、良い伝統が続けられていてすごいなと思いました。長田良子さんは、10才からお茶くみで参加し、何十年も中心となってお接待を支えてきました。私も、何か続けられることをさがしていきたいと思います。

※年れいは2019年3月末時点のものです。

【取材協力】
長田 良子(おさだ・りょうこ)さん(1933年生まれ、弓削島出身)
浜本 和美(はまもと・かずみ)さん(1951年生まれ、弓削島出身)
長田 礼子(おさだ・れいこ)さん(1959年生まれ、弓削島出身)
澤田 多加子(さわだ・たかこ)さん(1956年生まれ、弓削島出身)

【調査・文章・写真】
2018年度弓削小学校6年生

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