雨ごいおどり

■雨ごいおどりとは
 雨ごいおどりは、弓削島の伝統文化です。雨ごいおどりが始まったのは、室町時代といわれています。1回のおどりは10分ほどで、「庭」(てい)という単位で呼ばれていたそうです。だれが始めたのかは分かっていませんが、おぼんに祖先を供養(くよう)するための念仏(ねんぶつ)おどりからできたものだとも言われています。

 昔は、梅雨明けから20日以上雨が降らない時に、佐島と弓削島の下弓削地区、上弓削地区、久司浦(くじうら)地区の人々がそれぞれの地区で、神社やお寺をまわりながら雨ごいおどりをおどっていました。地区によって、身なりやおどり方、歌にちがいがあったそうです。各地区でおどっても雨が降らなければ、「入会(いりあい)」といって、2日間かけて下弓削地区、久司浦地区を行き来しておどった後で、佐島と弓削島とで向かい合って、同時に雨ごいおどりをすることもありました。

 戦後まもなく、各地区での雨ごいおどりは行われなくなってしまいましたが、1971年には、伝統を守るために「雨ごいおどり保存会」が発足し、1981年には弓削町(当時)の無形文化財に指定されました。

■道具と衣装
 現在の道具は、旗(はた)、大太鼓(おおだいこ)、小太鼓(こだいこ)、かねを使います。昔、佐島ではホラ貝も使っていたそうです。旗は、ふって合図をする指揮者(しきしゃ)です。旗には、観音経(かんのんきょう)というお経が書かれています。令和2年度では、旗が2人、大太鼓が9人、小太鼓が10人、かねが2人で行われています。昔は、旗が1人、大太鼓が2人、小太鼓が4人、かねが1人だったそうです。
(写真:大太鼓)
(写真:小太鼓)
(写真:かね)

 現在の衣装(いしょう)は、手甲(てっこう)と足がすりをつけて、白地浴衣を尻(しり)はしょりしてタスキがけをします。また、わらぞうり姿で、頭には手ぬぐいではちまきをします。(写真:現在の衣装)

 1833年に書かれた「大坂商人旅日記」によれば、そのころの弓削島の雨ごいおどりでは、太鼓を打っていた人が、ちりめんそめわけのたすきをつけて、伊達(だて)模様の染めゆたかを着ていた、と記録されています。

■歌とおどり方
 現在、伝えられている歌は「たーもれ、たーもれ、りゅうおういな、てーんにあめはないかいな、さあーまいろうさあーまいろう、さ!」と歌います。この意味は「雨を下さい、雨を下さい、りゅうおうさま天に雨はありませんか?さあ、りゅうおうさまにおまいりをしましょう」だそうです。

 最初の歌をうたっている間は、一定のリズムでたたきます。その後に小太鼓は「タンタン、タタタタ、タンタン」とたたき、大太鼓は、「タンタンタンタタタンタンタン」と右2回、左1回、右1回、左1回、右3回という順でたたきます。かねは「タンタンウンタンタンタタタン」というリズムです。そのリズムでたたきながら、とんだりはねたりしておどります。

 とちゅうの旗の合図で「エーイ、ナーンガーンドウフヤ、ドンドンドウフヤ、ドンドンドウフヤ、ドンドンドウフヤ、ドンカッカドンカッカドンカッカ、ヤオーオーオー、オゥ、オゥ、オゥオゥオゥサッ」と歌いながら「タンタンタン」と一定のリズムで楽器をたたきます。

 歌が終わったら最初のリズムにもどります。そして、旗がまた合図したら、もう一回さっきと同じことをします。それからまた最初のリズムにもどります。ただし、そのときは、最初のリズムを1回たたいて、二回目をたたきながら、「サァー参ろう、サァー参ろうサッ」と言います。このように、1回たたいたら、たたきながら「サァー参ろう」とくり返します。

 また、それをしながら大太鼓とかね、旗はそのままで、小太鼓だけが円の中に入って、小さな円を作ります。そして、しばらくリズムをたたきながらおどったら、もとの場所にもどります。

 その後、旗が合図をしたら、「エイ、ヤァー、ヤァーサー」とくり返しとなえながら、太鼓を一定のリズムでたたいて、一列に並び、礼をして雨ごいおどりは終わります。

■雨ごいおどりの保存活動
 一時活動が休止されていたこともありましたが、現在も雨ごいおどり保存会によって、例年5月から2月まで、約20名の小学校5、6年生、中学生の子どもたちが、月に2回1時間、放課後に雨ごいおどりの練習を続けています。
(写真:雨ごいおどりを受けつぐ子どもたち)

 雨ごいおどり保存会で子どもたちに雨ごいおどりの指導をしている青木英和(あおき・ひでかず)さんは、これからもずっと雨ごいおどりを地域の子どもに教えて活動を手伝っていきたい、今の子どもたちにも自分の子どもたちに雨ごいおどりを伝えてもらうことで、この伝統文化がつながっていってほしいと思っているそうです。

 私たちは、雨ごいおどり保存会に参加して雨ごいおどりの練習をしています。雨ごいおどりを発表して、ほかの地域の人に弓削島の伝統文化を知ってもらいたいです。

【取材協力】
雨ごいおどり保存会
青木 英和(あおき・ひでかず)さん(1963年生まれ、弓削島出身)

【参考文献】
弓削町役場『弓削町誌』1986年(昭和61年)
弓削町役場『弓削町誌 補遺』2004年(平成16年)
弓削町『弓削民俗誌』1998年(平成10年)

【調査・文章・写真】
2020年度弓削小学校6年生

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