岩城民謡「芋のくき」
「芋(いも)のくき」は、岩城島に伝わる民謡(みんよう)です。子どもの誕生、結婚式(けっこんしき)などのおめでたい場でうたう唄(うた)です。
唄の由来について、はっきりとしたことはわからないそうですが、岩城で古くから祝い唄として受けつがれてきました。
こんな話があります。江戸時代のことです。当時、岩城島が属していた伊予松山藩でひどい飢饉(ききん/災害などで農作物が育たず人々が飢え苦しむこと)があり、たくさんの人が亡くなりました。しかし、岩城島や近くの島では、飢え死にする人がいなかったというのです。それは、水が少なくても育つさつまいもがあったからです。こうしてさつまいものおかげでみんなが助かったことから、芋の茎はめでたいことを表すようになったと考えられます。
(動画:芋のくき)
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「芋のくき」
一、
めでたいな〜ア めでたいな
めでたい〜イ(ハリセー)ものは〜ア
芋のくき(ハーアノエンエ)
背丈〜のんで〜エ 葉もしげる
葉には〜ア(ハリセー)黄金の〜オ
露をもち(ハーアノエンエ)
あまた子もなる すえ繁昌 ショーンガエー
(一気に返せ そのうら戻せ)
二、
天智天皇〜ノ 秋の田の〜
刈り干す〜ウ(ハリセー)稲の〜オ
番すれば(ハーアノエンエ)
いとしや〜夜露に〜イ 濡れしゃんす
濡れぬ〜ウ(ハリセー)うちこそ〜オ
いとうけど(ハーアノエンエ)
ぬれてのちには いとやせぬ ショーンガエー
(一気に返せ そのうら戻せ)
三、
めでたいな〜ア めでたいな
これの〜オ(ハリセー)お家は
めでたいな(ハーアノエンエ)
白き〜ねずみが〜ア 三つ連れて
また三つ〜ウ(ハリセー)連れて〜エ
六つ連れて(ハーアノエンエ)
小判くわえて 金はこぶ ショーンガエー
(祝いましょ〜ションション
もう一つせ〜シャンシャン
祝うてシャンのオシャシャのシャン)
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「芋のくき」をうたう時に使う楽器は、主に、三味線(しゃみせん)太鼓(たいこ)、鐘(かね)です。琴(こと)を使うこともあります。三味線は、主に木と糸と皮でできています。
(写真:三味線、太鼓、鐘)
ぼくは、8歳ごろから三味線を習っています。今は三味線と太鼓を演奏することができます。今回の演奏では、三味線をひきました。いっしょに演奏しているのは、ぼくの家族です。
「芋のくき」はテンポが速いので、ひくには慣れが必要です。でも、うまくひけたのでうれしかったです。「芋のくき」を演奏しているときは、楽しい気持ちになります。この大切な伝統を未来に残すために、ずっとうたい続けていきたいと思います。
(イラスト:三味線)
【参考文献】
岩城村『岩城村誌 下巻 現代編』1986年(昭和61年)
越智郡公民館連絡協議会『越智郡 むかしむかし そのニ(民謡の部)』 1986年(昭和61年)
【調査・文章・イラスト・演奏】
2021年度岩城小学校6年生