上島町の動物

■かつて上島町に生息していたカワウソ
 昔、弓削島、佐島、魚島などの上島町の島々には、現在よりも色々な動物が住んでいました。今ではいなくなってしまったカワウソも、かつて、佐島や魚島などに生息していたそうです。

 カワウソはイタチの仲間です。全長は約1mから大きいもので約1.5mほどあり、表面の毛の色は茶色をしていました。しっぽは太くて長く、指の間に水かきがあり、魚や貝やカニなどを後ろ足で立ってつかまえて食べていました。かしこくて泳ぎが上手く、陸の上でもすばやく行動できてほとんど姿を現わさなかったため、つかまえることがとても難しかったそうです。

 このためカワウソは「えんこ(かっぱ)」と呼ばれ、上島町の島々には、えんこが人を化かしたり動物を水の中に引きずりこんでしまうという伝説が残されています。

 佐島には、地元の人たちに「おそごえ」と呼ばれている海岸があります。カワウソがこえて行く瀬(せ)、「ウソごえ」がだんだんなまって、「おそご」えになったのではないかと考えられています。

 また、魚島のとなりの江ノ島では、昭和40(1965)年にカワウソがつかまったという記録が残っています。しかし、昭和40年代には絶めつしてしまったとされています。
(イラスト:カワウソ)

■弓削島の動物についてのアンケート
 私は、弓削島で昔よく見られた、そして今見られる動物について、30代から40代の保護者の方、60代から70代にかけての祖父母の方、弓削小学校の児童にアンケートを行い、12名の方々から回答をいただきました。

 その結果、佐島にはカワウソ以外にもう一種類めずらしい生き物が生息していたことがわかりました。カブトガニという生物です。

 そして弓削島では、タヌキ、野犬、キジ、ハヤブサ、シロマダラやアオダイショウなどのヘビ、イタチ、ネズミ、ハクビシン、さらには色々な種類のカエルといった生物が見られたことがわかりました。このうち日中よく見られた動物はキジ、ヘビ、イタチ、ハヤブサです。タヌキ、野犬は夕方から夜にかけて見られたそうです。

 60代から70代の方の回答によれば、昔はキジの狩猟(しゅりょう)期間があり、その前に幼鳥を放鳥していたので、かなりの数のキジがいたそうです。

 愛媛県では、昭和39年(1964年度)から令和2年(2020年度)にかけて、キジの放鳥が行われていました。県全体で多い時には8000羽のキジが放鳥されていましたが、飼育者の減少などにより少しずつ数が減り、平成29年度から令和元年度(2002年度~2019年度)には1200羽、最後に放鳥が行われた令和2年(2020年度)には519羽となりました。

 古くから行われていたため、残されている記録は少ないのですが、弓削島では平成24年度~平成27年度(2012年度~2015年度)に「休猟区(きゅうりょうく/動物を増やすために猟をしてはいけない区域)」が指定されていた時期があり、平成24年にはここで70羽の放鳥が行われました。

 また、キジが特に良く見られたのは、繁殖期(はんしょくき/子どもを生み育てる時期)の春から初夏にかけて、畑やみかん畑の近くの草むらだそうです。

 ハヤブサは夏によく見かけられたそうです。山にも海にも近いところに住んでいたそうです。

■今も住んでいる生き物について
 弓削島には今でもさまざまな生き物がすんでいます。カラスやキジ、ハヤブサ、イノシシ、タヌキ、ヘビなどが山に生息しています。アンケートでは、小学校5年生の児童から、キジのオスは羽根を広げるととてもきれいだという回答がありました。

 イノシシは昔はほとんど見られなかったそうですが、今は大変よく見られるようになりました。30〜40代の回答者は、「子どものころにはいなかったのに、大人になって島にもどって来たところ、たくさんいるようになったのでおどろいた」と回答しています。2004年に近くの生口島(いくちじま)で山火事が起きた際、弓削島ににげてきたイノシシが繁殖したのではないかとも言われています。

 その他、水辺ではクサガメなどのカメ、ウシガエルなどのカエル、海ではタコやイカ、アカテカニ、そして色々な種類の魚、カモメやウミネコなど色々な種類の鳥がいます。

 私はこれからも様々な上島町の動物を調べたいです。

【参考文献】
弓削町役場『弓削町誌』1986年(昭和61年)
上島町役場『広報かみじま1980年12月号』
魚島村 『魚島村誌』 2004年 (平成16年)

【取材協力】
上島町教育委員会 学芸員 有馬 啓介(ありま・けいすけ)さん
愛媛県県民環境部自然保護課

【調査・文章・イラスト】
2021年度弓削小学校6年生

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