岩城のいもがし
いもがしは、スティック状に切ったさつまいもを油であげ、さとうのミツをからめた岩城の特産品です。一般的(いっぱんてき)には、「いもけんぴ」とよばれることが多いおかしですが、岩城では「いもがし」と呼んでいます。
(写真:タムラのいもがし)
■いもがしの生みの親「益田谷吉」
岩城で、最初にいもがしを作ったのは、益田谷吉(ますだ・たにきち)という方です。谷吉は、1986年(明治元年)岩城島に生まれ、大阪や神戸へ船の荷物を運ぶ仕事をしていました。ある日、谷吉は、神戸のおかし問屋(※1)で、とてもおいしい、さつまいものおかしを食べさせてもらいました。その時、谷吉は、ふるさとの岩城のことを思い出しました。当時、岩城では、たくさんのさつまいもを作っていたからです。谷吉は、岩城のさつまいもを活用するために、そのおかしをどうしても作りたいと思い、研究を始めました。しかし、なかなかなっとくのいくおいしいものができませんでした。それでも谷吉はあきらめず、何年もかけて、やっとおいしいいもがしを作ることに成功しました。そして、その作り方を島の人たちにも教えてあげました。
こうして、多くの人が、岩城でいもがし作りをするようになりました。多いときには、40けんもの工場があり、岩城で作られたいもがしが、全国で売られていたそうです。けれども今は、「タムラ食品」1けんだけになりました。
■タムラのいもがし
「タムラ食品」の工場は、岩城港から歩いて、5分くらいのところにあります。いもがしが作られている時間に、工場の前を通ると、とてもいいにおいがします。
「タムラ食品」の桑原亮(くわはら・あきら)さんに、いもがしの作り方についておうかがいしました。
(写真:タムラ食品の桑原亮さん。いもがし工場にて)
いもがしの材料は、さつまいも、さとう、植物油のたった3種類だけです。さつまいもは、黄金千貫(こがねせんがん)という、いもがしにぴったりの品種を使っています。おいしく作るため、いもをほったその日に、1度油であげているそうです。
おいしさのひけつは、さとうの量にもあります。1年を通しておいしく感じられるように、季節によって、さとうの量を調節しているそうです。夏は、いもの味をより引き出すためにさとうを減らし、冬は多くしているとのことです。作った日に近ければ近いほど、おいしい状態で食べられるそうです。工場に行けば、できたてのものを買うこともできます。タムラ食品では、毎日約100ふくろもの量のいもがしを作り、出荷しています。
桑原さんに、いもがしを作るときに、気をつけていることをたずねると、「おいしく作るのは当たり前。安心安全ないもがしをみんなにとどけられるように作っている」と教えてくれました。いもがしは、シンプルな材料で作られているので、牛乳、たまご、小麦などのアレルギーがある人でも食べることができるおかしです。
(写真:あげたいもにさとうのミツをからめる器具)
■タンザニアに広がるいもがしの輪
そんないもがしは、海をこえて、アフリカのタンザニアでも作られています。タンザニアでも、さつまいもがたくさん育てられているそうです。そのため、タンザニアでもいもがしを作りたいと、タムラ食品に研究に来られました。タンザニアのいもがしは、タンザニア空港などではん売されているそうです。
【取材協力】
タムラ食品 桑原 亮(くわはら・あきら)さん
【参考文献】
上島町教育委員会『上島町のくらし 3・4年生社会科副読本』2016年
岩城村『岩城村誌』1986年
【調査・文章・写真】
2018年度岩城小学校6年生