岩城の秋祭り
「島にぎやかに!岩城の秋祭り」
岩城(いわぎ)港に降り立ち、右手の高台に見える緑色の屋根が岩城八幡神社(いわぎはちまんじんじゃ)です。岩城八幡神社では、応神天皇(おうじんてんのう)と神功皇后(じんぐうこうごう)をおまつりしています。
岩城八幡神社の秋祭りは、毎年10月に行われます。江戸時代から、五こく豊じょう(※1)を願い、続いているお祭りです。みこし、女みこし、だんじり、ししまい、奴(やっこ)の練り歩きが行われ、島中がとてもにぎやかになります。朝8時頃から、日付が変わるまで行われる島の一大行事です。
(写真:みこし)
(写真:女みこし)
だんじりには、小学生が「乗り子」になり、たくさんの大人がそのだんじりをかつぎます。乗り子は、化しょうをし、たいこをかなでながら、歌を唱えます。乗り子は、祭りの期間中、地面に足を付けてはいけません。それは、「神様」と同じあつかいだからだそうです。移動するときは、大人に「かたぎま(かたぐるま)」をしてもらい、大切にあつかわれながら、移動します。また、東と西では乗り子の化しょうが違います。東は、女化しょう、西は、男化しょうをします。
(写真:西のだんじり)
(写真:東のだんじり)
(写真:かたぎまをしてもらって移動する乗り子)
「海原じし」とよばれるししまいは、岩城八幡神社や厳島神社(いつくしまじんじゃ)でほうのうされます。かりゅうど、てんぐ、さる、しし、たいこなどの役わりがあります。ししが通ると、小さい子どもは泣いてしまうほどのはく力があります。てんぐが持っている竹で頭をたたかれると、頭が良くなると言われています。
(写真:海原地区のししまい)
奴は、たくさんの家を周り、豊作をいのるために行われているそうです。大人といっしょに小学生も参加しています。ぼうを投げるところが見所です。
(写真:奴)
また、岩城八幡神社でほうのうされる「浦安の舞」(うらやすのまい)は、中2の女子から参加することができます。神様におどりをひろうしたり、不幸事からみんなを守ったりするために行われています。毎年、中3の女子が中2の女子に舞(まい)を教えることが伝統になっています。
(写真:浦安の舞)
岩城島の秋祭りは、だんじりやししまいを見て楽しむだけではありません。たくさんの家でおもてなしの準備がされており、自由に家々を出入りし、食事をとりながら楽しい時間を過ごすという風習があります。これまで長い間、祭りに関わってきた黒瀬光政さんにお話を聞いたところ、「昔はねないで料理の準備をしていてとても大変だった。今はオードブルを頼むことができ、少しは楽になったけれど、おもてなしをする家の数は減ってきている」とおっしゃっていました。
(イラスト:お祭りのイメージ)
また、だんじりやみこしのかつぎ手の数も減っていています。黒瀬光政さんは、「これからもにぎやかで楽しくやっていきたいし、永遠に続いてほしい」とおっしゃっていました。ぼくはこの言葉を聞き、岩城の伝統行事であるこの祭りをこれからももり上げていきたいなと思いました。ぜひ多くの方に、この自まんの秋祭りを見に来てほしいと思います。
(イラスト:提灯)
(イラスト:ししまい)
(イラスト:てんぐ)
※1 五こく豊じょう:こく物が豊かに実ること
【取材協力】
黒瀬 光政(くろせ・みつまさ)さん(1939年生まれ、岩城島出身)
【調査・文章・イラスト】
2017年度岩城小学校6年生