エジル石閃長岩

■岩石、鉱物(こうぶつ)とは?
 私たちがふだん「石」と呼んでいる物の多くは、「岩石(がんせき)」です。「岩石」の中には、様々な「鉱物(こうぶつ)」がふくまれています。中に入っている鉱物によって、岩石の色などの見た目が変わります。岩城島には、愛媛県の天然記念物に指定されている「エジル石閃長岩(エジルせきせんちょうがん)」という貴重な岩石があります。(写真:県の天然記念物指定書)

■エジル石閃長岩とは?
 エジル石閃長岩は、上島町・岩城島の北東部にある暮坂山(くれさこやま)で発見された岩石です。杉石(すぎいし)や片山石(かたやまいし)、村上石(むらかみいし)、他にもエジリン、ペクトライト、ユ一ディアル石様鉱物などの鉱物がふくまれています。現在は一般的(いっぱんてき)にアルビタイトと呼ばれています。(写真:エジル石閃長岩)

■エジル石閃長岩にふくまれる鉱物その1「杉石」
 エジル石閃長岩にふくまれる鉱物の1つ「杉石」は、「ミラー石」という鉱物の仲間で、1976年に新しい鉱物として認定されました。岩城で見つかったエジル石閃長岩から、世界で初めて見つかった鉱物です。日本産はうぐいす色ですが、南アフリカなどではむらさき色をしており、宝石となるものもあります。

 杉石の発見までには、長い道のりがありました。はじめは、九州帝国大学(現・九州大)の杉健一(すぎ・けんいち)教授が、1942(昭和17)年から岩城で調査をし、1944(昭和19)年に論文でしょうかいしました。その後、杉教授の教え子である山口大学の村上允英(むらかみ・のぶひで)教授が研究を引きつぎ、1976(昭和51)年に、エジル石閃長岩に未発見の鉱物がふくまれていることが分かりました。約30年かけて調査をし、その新しい鉱物の名前には、杉先生の名前にちなみ「杉石」という名前がつけられました。

■エジル石閃長岩にふくまれる鉱物その2「片山石」
 1983(昭和58)年には、ブラックライトで短紫外線(たんしがいせん)を当てると青白い蛍光色(けいこうしょく)に光る成分がふくまれていることが分かりました。この新鉱物は日本の鉱物学者である片山信夫(かたやま・のぶお)東京大学名誉(めいよ)教授にちなみ「片山石」と名づけられました。その後の研究で「バラトバ石」という鉱物と同じ仲間であるとされ、その中でも特に水(OH)をふくむ新鉱物で片山石もめずらしく、岩城島とタジキスタン共和国とキルギス共和国でしか見つかっていない鉱物だそうです。(エジル石閃長岩にブラックライトを当てている様子)

■エジル石閃長岩にふくまれる鉱物その3「村上石」
 さらに、2016(平成28)年には、村上允英教授の教え子で、山口大学の今岡照喜(いまおか・てるよし)教授と永嶌真理子(ながしま・まりこ)教授らの研究により、リチウムをふくむ新鉱物があることが分かりました。この新しい鉱物には、やはり恩師(おんし)である先生の名前にちなみ「村上石」という名前がつけられました。

■調べてわかったこと
 なぜこの暮坂山で調査を始めたのか、理由はわかりませんでした。また、岩城島にエジル石閃長岩がある理由は、花崗岩(かこうがん)が多いことが関係するそうですが、その仕組みははっきりとはわからないそうです。

 1942年に発見されてから、だんだんと新しい鉱物が発見されるようになったのは、精度よく分せきできる新しい機器・技術が使えるようになりわかることが増えたからだそうです。これからもっと新しい発見があるかもしれません。

 今回私たちは、上島町教育委員会の有馬さんの案内で、エジル石閃長岩が露出(ろしゅつ)している暮坂山の採くつ現場に行かせてもらいました。現場には、大きな岩石がたくさんあり、とてもびっくりしました。 行ってみてこんなにすごい場所で発見したんだと分かりびっくりしました。

 また、鉱物の名前に研究してきた人の名字がつけられているということにもおどろきました。鉱物の名前に自分の名前がつけられるのはとてもうらやましいです。

 岩城でめずらしい閃長岩がみつかったことはとてもすごいことです。鉱物について調べることができて良かったです。

■山口大学名誉教授 今岡照喜先生から児童への応えんメッセージ
「岩城島暮坂山周辺の岩石についてはナゾだらけです。国内に似た鉱物は出現しませんし、世界でも本当にめずらしいのです。タジキスタン共和国とキルギス共和国くらいしか、似たものが産出しません。暮坂山付近になぜこういうめずしい鉱物がでるのか分かりません。小学生で岩石に興味をもち、めずらしい鉱物についてここまでくわしく調べたことはすごいですね。大学生になったらぜひ郷土のナゾを解いてください。それは郷土のナゾの解明にとどまらず、世界の鉱物のナゾの1つを解くことにつながります。」
(写真:暮坂山で取材を行った様子)

(写真:有馬さんに説明を聞くわたしたち)

【取材協力】
山口大学名誉教授 今岡 照喜(いまおか・てるよし)先生
上島町教育委員会 学芸員 有馬 啓介(ありま・けいすけ)さん

【参考文献】
岩城村『岩城村誌 下巻 現代編』、1986年
「『夢の宝庫』岩城島」、『毎日新聞』、2016年1月8日、朝刊(愛媛)、22面
愛媛県教育委員会文化財保護課編『愛媛県の地質鉱物〜天然記念物緊急調査(地質鉱物)報告書〜』、愛媛県教育委員会、2003年
「エジル石誕生の謎に迫る」、『広報かみじま』、2015年12月、5頁
山口大学「リチウムを含む新鉱物「村上石」の発見」 、(https://www.sci.yamaguchi-u.ac.jp/ja/sci/info/news/2016/images/20161212.pdf 閲覧日:2021年7月1日)

【調査・文章・写真】
2021年度岩城小学校6年生

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