野や磯の食材
■野や磯(いそ)にある食材
弓削島では昔から、野草や海そう、貝を自分で採って食べることがありました。たとえば、セリはゆがいてしぼったものを刻み、白ご飯に混ぜて「セリご飯」にして食べることがあります。
かつて弓削島では、今よりもたくさん、季節ごとに様々な野草や海そう、貝が採れたそうです。春は、ワラビ、フキ、タラノメ、ハアタナ(イタドリ)、ヨモギ、タンポポ、セリ、ユキノシタ、ツツジの花、ブイブイ(ナワシログミ)などです。夏は、ツルナ、アサリやツボなどの貝、モズク、イギス、モバ(アマモ)などです。秋は、マツタケ、ズルナバ、ナメコなどのキノコやアケビ、冬は、ノビルやイワガキなどです。ヨモギは、秋にも採れるそうです。
(イラスト:ノビル)
■採り方のコツ
それぞれに、採り方のコツがあります。たとえばタラノメは、枝の真ん中ではなく、枝分かれしているところが採りやすいそうです。イワガキは、カキウチと言う細いカマのような道具を使って貝がらから身を採ります。その時、貝がらのふくらんでいる方ではなく、平べったい方をコツコツたたきます。たたいていると貝がらが開いてくるので、そこにカキウチの先を入れてこじあけます。
(写真:カキウチ)
(イラスト:かきうちの方法)
このように山や磯には、食材になる色々なおいしい野草や海そう、貝が生息していました。また、家の近くの「げし」とよばれていた所でも野草がよく採れていたそうです。げしとは、畑と道の間にある、草が生えた小さなしゃ面のことです。
■おいしい食べ方
野草や海そうには、それぞれおいしい食べ方があります。タンポポやユキノシタは、天ぷらです。特にタンポポの花は、花が閉じてしまわないように明るいうちに採ったものをすぐにあげるときれいだそうです。ツルナは、おひたしやごまあえにして食べたそうです。ノビルは、ゆがいて、さとうとからし、す、みそをすりばちですったものをつけて食べます。葉の部分を結ぶと、緑色の部分がかざりになってきれいだそうです。またイワガキは、カキごはんにして食べると美味しいそうです。
野草を調理する時に気を付けることは「あくぬき」です。天ぷらにする時は、そのままあげてよいですが、それ以外の調理では、ゆがいたあと水にひたしておくなどして、必ずあくぬきをします。
今回、取材させていただいたのは浜長子さんです。1942年生まれの77才で、今もご夫婦で野草を採っています。浜さんが子どものころは家の周りや「おくごおら」と呼ばれていた、少し暗く草や木などがたくさん生えている山の入り口で、食べられる野草がよく採れたそうです。
子どもに人気があったのは、アケビ、ブイブイ、ハアタナなどでした。まだ青いアケビは、米びつの中に入れて、熟してから食べました。熟して食べるとよりあまく、やわらかくなります。米びつがなければ、常温で置いておいてもよいそうです。ハアタナは特に男の子に人気で、勇気のある子は、「おくごおら」のおくまで入って行って採ってきたそうです。外の皮を縦に割くようにむいてかじったそうです。また、海では遊びながらモバの根をかじって食べたそうです。根はあまかったそうです。
ぼくたちは取材の時に、春には野草を天ぷらにしてもらって、秋には木になっているアケビを採り方や食べ方を教えてもらって、食べました。
(写真:浜さんがつくってくれた天ぷら)
天ぷらは食べる前はあまりおいしくないだろうと思っていました。でも、いざ食べてみると予想をはるかにこえるおいしさでした。苦味はあまりなく、塩とよく合ってポテトチップスのようにサクサクしていました。特にユキノシタがおいしかったです。ユキノシタは葉の表が緑色で裏は茶色で、色もおもしろかったです。
(写真:ユキノシタの葉の表と裏)
アケビは長い枝切りばさみを使って、自分たちで採りました。採れた実をよく見ると実の真ん中に筋があり、そこに切りこみを入れるように手で割って中身を食べました。食べるのは種のまわりの綿のような部分です。食べながら、種を口の中から外に飛ばして遊ぶのも楽しいと教えてもらいました。
(写真:山に実るあけび、ぼくたちが採ったあけび、あけびの中身)
このように弓削島には、自然のものを色々工夫しておいしく食べている人たちがいます。とてもかしこいなと思いました。また、こうした知識を持っていたら、自然災害の時にも野草や海そうが食べられます。ぼくたちは食べられる野草や海そうがある弓削島の自然をこれからも大切にしたいです。
※年れいは2020年3月末時点のものです。
【取材協力】
濱 長子(はま・ながこ)さん(1942年生まれ、弓削島出身)
【調査・文章・イラスト・写真】
2019年度弓削小学校6年生