いきなフェリー「ゆめしま」

 いきなフェリーは、上島町・生名島と尾道市・因島を結ぶフェリーです。2020年に「ゆめしま」という新しい船が完成しました。「ゆめしま」は、いきなフェリーの7代目の船です。


(動画:土生港長崎桟橋から立石港に向かう「いきなフェリー」ドローンによる撮影)

■いきなフェリーの歴史
 いきなフェリーは、1784(明治7)年にろこぎ船から始まり、1954(昭和29)年に因島市営渡船(とせん)として営業を開始しました。昭和43年ごろは1日45便でしたが、今では1日60便もあります。1日に約1,600人と約1,200台の車が利用しています(2019年度現在)。

 昔(昭和37年ごろ)の料金(片道)は、大人は10円、子どもは5円、自動車(乗用車大型)250円、自転車10円でした。今は、大人70円、子ども40円、自動車(4m以上5m未満)630円です。昔の料金表には、羊、やぎ、ぶた、牛、馬の料金もありました。

■「ゆめしま」
 「ゆめしま」の前には、2002(平成14)年に完成した「二代目いきな」が活やくしていました。なぜ「ゆめしま」をつくったのかというと、今までがんばってくれていた「いきな」が古くなってきたことと、岩城橋が開通することにより、車の運ぱん台数が増えることを考えて、もう少し大きい船が必要になったからです。「ゆめしま」を作るのに、3億9600万円かかったそうです。

 「ゆめしま」の大きさは、長さ48メートル、横はば12.5メートル、深さ2.95メートルです。船自体の重さは約350トンで、それに人や車、燃料、水などをあわせて最大150トン積むことができ、その時の重さは約500トンになります。これは、アフリカゾウ約100頭分だそうです。スピードは、最大8.963ノット(時速16.6km)です。だいたい自転車と同じ速さです。

 「2代目いきな」には、120人と18台の車(普通(ふつう)乗用自動車)を乗せることができました。それよりも少し大きくなった「ゆめしま」には、150人と24台の車を乗せることができます。

 「ゆめしま」の船のすごいところは、舵(かじ)の能力が前の船よりも上がっていることです。より安全に運転しやすい船になっているそうです。また、体が不自由な人やお年寄りが乗れるように、バリアフリーになっています。

 他にも、船の中と桟橋(さんばし)にかんしカメラがついていて、その映像を操縦席から見ることができるようになっています。悪いことをする人がいないかチェックするだけではなく、船の中の様子や船を待つ車の混雑状きょうを知るためにあります。例えば、桟橋のカメラにトラックが映っていたら、次にトラックが乗ることがわかるので、船長さんはトラックを乗せやすいように船をつける位置を変えるのだそうです。

■いきなフェリーで働く人
 船長さんは、ブリッジという場所で船を操縦しています。船は、プロペラが回ることによって動きます。前に進むときは、後ろのプロペラが動きます。止まるときは、前のプロペラが動きます。車のようにブレーキがあるわけではありません。そして、舵(かじ)をそうさして、方向を変えます。風と潮(しお)を考えながら、操縦するそうです。(写真:ブリッジで船を操縦する船長さん)

 船長さんや船員さんは、2〜3日働いて、1〜2日休むという働き方をしています。船は365日毎日動いているので、平日働いて土日が休みというわけにはいきません。おぼんや年末年始も長い休みは取りにくいそうで、大変だなと思いました。

 また、1日の中で、早番(はやばん)と遅番(おそばん)の人がいるそうです。早番は、5時20分から18時20分までで間に休けいが4時間、遅番は、11時20分から23時20分までで間に休けいが3時間あります。

 船長さんが大切にしていることは、目的地までお客さんを安全に、時間通りに運ぶことだそうです。お客さんは予定があって船に乗っているので、時間を守ることは大切だとおっしゃっていました。

 ぼくは取材で船の機関室に入れてもらいました。機械が多く、音が大きく、はく力がありました。(写真:機関室)

【取材協力】
上島町役場公営事業課

【参考文献】
生名村誌編纂委員会編『生名村誌』、生名村、2004年

【調査・文章・写真・ドローン動画撮影】
2021年度生名小学校6年生

関連記事